2012 年 15 巻 4 号 p. 199-204
2011年7月27日と同月28日,東京都小笠原村母島石門地区において,森床に営巣するアリ類の巣内を調査した.その結果,小笠原固有種の昆虫クロサワヒゲブトアリヅカムシが,同じく固有種オガサワラアメイロアリの巣内から1個体発見された.このアリヅカムシは属島兄島においても,上記アリ種の同属種ケブカアメイロアリの巣内から得られている.発見された個体は,いずれもアリ巣内の中心部でアリの攻撃を受けずに生息していた.クロサワヒゲブトアリヅカムシは従来好蟻性であることが予想されており,今回の調査によりこのアリヅカムシは,少なくともアメイロアリ属を宿主として利用することが示唆された.小笠原諸島は近年人為的に移入されるアリ種が急増しており,今後もこの状況が続くのであれば,この島固有の好蟻性昆虫の生息状況に何らかの影響が及ぶ恐れがある.