2016 年 19 巻 3 号 p. 86-93
施設栽培作物の送粉者としてケブカハナバチの利用の可否を検討するため,小規模なビニールハウス内で本種を放飼し,野外の自然営巣集団と営巣活動について比較を行った.本種は閉鎖環境によく順応し,放飼開始からわずか6日後には花粉採餌を開始した.ハウス内における営巣メスの日あたりの採餌飛翔は平均15回で,創設した巣の数は最大で3巣に達した.メスあたりの創設巣数および生産子孫数,巣あたりの育房数および子孫死亡率はハウスと野外で有意差は認められなかった.閉鎖環境でも正常に飼養でき,幅広い活動条件を示す本種は,施設栽培の送粉者としても優れた特性を備えていると言える.