昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
原著論文
セアカヒラタゴミムシ(オサムシ科)の幼虫期およびその形態と生態
渋谷 園実 田中 則政松下 範久井田 耕平福田 健二
著者情報
ジャーナル フリー

2026 年 29 巻 2 号 p. 81-95

詳細
抄録

幼虫の研究は,その種を知る上で非常に重要であるが,コウチュウ目オサムシ科の幼虫期および幼虫の形態と生態に関しては,不明な点が多い.セアカヒラタゴミムシは,身近な種で飛翔する個体が存在することがわかっているが,幼虫については,幼虫の時期とその期間,種同定に必要な情報および生態など基礎的な知見が少ない.そこで,1)幼虫の種同定にDNAバーコーディングを活用して本種の幼虫期を明らかにし,2)幼虫の行動と形態的特徴を記録することで野外における幼虫の生態を形態的特徴とリンクさせた.

まず,本種の幼虫期を把握するために,野外調査を実施し本種の幼虫を捕獲した.その結果,本調査地では,幼虫が捕獲されたのは10月~4月で,各齢の捕獲数から,齢が上がるとともに活動性が高まると考えられた.また12~2月にも幼虫が捕獲されたことから,この時期も餌生物を探して活発に行動していると思われた.幼虫越冬であることはこれまでも知られていたが,3齢幼虫で越冬し,さらに幼虫期間が6ヶ月と非常に長いことがはじめて明らかにされた.

次に,幼虫の形態を調べ,生態との関連を考察した.頭部は,大あごの付け根の太さが頭部に比べ細長く,湾曲し先端部は鋭かった.大あごで噛みついてくるなど,形態だけでなくその攻撃性からも肉食の捕食者であることが示唆された.胸部の腹面のみは,光沢がなく柔らかく,これは脚を自在に動かすためにそのようになっていると考えられた.腹部は,尾状突起が長く,このことから地表走行タイプと推定できた.また,柔らかい円筒状の第10腹節があり,これを吸盤のように使って自在に急停止したり,方向転換を行ったりすることで,胸部の脚の歩行機能を補完している可能性が示唆された.

オサムシ科においては幼虫の研究が少なく,特に生態に関するものはほとんどない.しかし,本研究のように形態と関連づけることで生態を読み解くことは可能であり,両者を関連づけることで互いの研究を補完できると考えられる.

著者関連情報
© 2026 日本昆虫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top