日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
鱗翅目昆虫の化性に関する研究
II. 家蚕の化性に及ぼす蛹の保護温度の影響について
吉武 成美
著者情報
ジャーナル フリー

1954 年 23 巻 6 号 p. 343-348

詳細
抄録

蛹の保護温度によつて卵の着色性並びに越年性に差異を生ずる原因を追究するために実験を行い次の結果を得た。
1. 蛹の保護温度並びに産下後の卵の保護温度は卵の着色性に影響を与えるが, 2化性の正常卵においては前者の方がその着色性に及ぼす影響は大である。
2. 卵への3-hydroxykynurenine の透過性に対して最も温度の感受性の高い時期は蛹中期の前半である。その時期を生理的に害を及ぼさない程度の低温で保護する時は, 30℃の如き高温で保護を行う場合よりも多量の3-hydroxykynurenine が卵へ移行し, それがためその産下卵は濃く着色する。
3. 蛹の保護温度の相違は化性ホルモンの作用並びに卵巣の発育速度に影響し, 最終的には3-hydroxykynurenine の卵への移行量を左右する。それがため卵の着色性に変化を来すのであろう。
4. 蛹の保護温度によつて卵への透過性が左右されるのは3-hydroxykynurenine ばかりでなく, kynurenine についても同様である。2化性において着色性と越年性とが常に平行的にいくのは, 恐らく化性ホルモンの働に対してこれらの着色性物質と抑制質の卵への移行が同一行動をなすからではないかと考えた。

著者関連情報
© 社団法人日本蚕糸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top