日本蚕糸学雑誌
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セリシン繭に関する研究
(I) セリシン蚕の化学的特異性
渡辺 忠雄
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1959 年 28 巻 4 号 p. 251-256

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抄録

家蚕の突然変異種の1つであるセリシンのみを吐糸するセリシン蚕についてその特異性を正常蚕と比較して研究した。
1. セリシン蚕はフィブロインはほとんど吐糸せずセリシンを正常蚕のセリシン量とほぼ同量吐糸することを知つた。
2. セリシン蚕の体液の遊離アミノ酸は正常蚕の体液に比較して約10倍のグリシンと数倍のセリン, チロシンを含むがアラニン含量は正常蚕と変らなかつた。
3. セリシン蚕の吐糸するセリシンは正常蚕のセリシンと同じアミノ酸組成を示した。
4. セリシンは家蚕の体液中の各アミノ酸含量の大小によりそのアミノ酸組成が変化しないと考えた。
5. 正常蚕の体液蛋白のアミノ酸組成は哺乳動物の血液蛋白質によく似ており, セリシン蚕の体液蛋白も大体同じ結果が得られた。
6. セリシン蚕から分離した正常蚕と通常の蚕との間には特別な相違は認められなかつた。

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