日本蚕糸学雑誌
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セリシン繭に関する研究
(III) セリシンの光散乱
渡辺 忠雄
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1959 年 28 巻 6 号 p. 375-380

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抄録

1. セリシン蚕の中部糸腺, セリシン繭, 正常繭より各種の方法でセリシンを溶出しセリシン水溶液をえ, その散乱強度を光散乱法によって測定し分子量を求めた。その結果, 中部糸腺よりえた液状セリシン及びセリシン繭をCu-En法によつて溶解したセリシンの分子量はそれぞれ9.1×105及び8.3×105であった。正常繭よりMOSHERの方法により加熱抽出, 或いはアルカリ抽出したセリシンの分子量はそれぞれ7.5×105及び6.5×105であつた。以上のことから加熱抽出或いはアルカリ抽出によるセリシンは可成り分解していることが考えられ, 一方セリシン蚕の中部糸腺より抽出したセリシンはほぼ未変性のセリシンに近いものと考えられる。
2. 上のセリシン溶液より不溶性のセリシンBを除いたセリシンA溶液の散乱強度を測定し分子量を求めた。セリシン蚕の中部糸腺からえたセリシンA及びセリシン繭からCu-En法で得たセリシンAの分子量はそれぞれ2.3×105及び1.9×105であったが正常繭からMOSHER法によつて得たセリシンA及びアルカリ抽出によつてえたセリシンAの分子量はそれぞれ5.4×104並びに2.8×104であつた。以上の結果からMOSHER法, 或いはアルカリ抽出による場合は未変性のセリシンが崩かいしてその崩かい物がセリシンAとして測定されるものと考えられる。
3. セリシン蚕中部糸腺の前区, 中区, 後区よりそれぞれセリシンを溶出してその散乱強度を測定した。その結果は前区よりえたセリシンの分子量は中区, 後区より小さく, セリシンは絹糸腺内においても不均-であることを示し, さらに前区より分泌されるセリシンはセリシンAであることが推測された。

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