日本蚕糸学雑誌
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野外昆虫多角体病と家蚕多角体病との関係
(II) 樗蚕の体腔型多角体病について
石川 義文浅山 哲
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1960 年 29 巻 6 号 p. 506-508

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抄録

自然状態 (野外) で採集した樗蚕の核型多角体病について2, 3の調査を行つた。
1) 樗蚕は自然状態 (野外) でウイルス病に侵されないものと考えられていたが, 1959年7月樗蚕の繭中末化蛹蚕が多角体病に罹つているのを認めた。
2) その多角体の大きさは一般に0.9~5.0μ で, 1.5μ程度の小型のものが多い。多角体の形状は普通三角形又は四角形に見えるものが多いが, 小形のものでは形状の不明瞭なものが多い。
3) このウイルスは樗蚕に対し, 伝染力を有する。夏期 (7月) 樗蚕蛹に接種した場合, 約10日の潜伏期を経て発病死した。病蚕及び病蛹の血液は膿汁化し, 無数の多角体が含まれている。病虫の皮膚はもろく, 破れ易いが, 病蛹では体内容物は軟化するが, 皮膚は固く破れにくい。
4) 本ウイルスは家蚕に対し伝染力をもつ。夏期本ウイルスを家蚕に接種すると4令起蚕では6~7日, 5令起蚕では8~13日の潜伏期を経て発病へい死する。同一令では潜伏期は接種ウイルス濃度の高い場合に短縮する。樗蚕ウイルスによつて発病した家蚕の病徴は家蚕ウイルスによつて発病した場合によく似ている。但し壮蚕期に発病したものでは数環節に黒縞状の黒斑を発現する場合がある。病蚕の血液は乳状に混濁し, 無数の多角体を含有する。本多角体は樗蚕のものと同じである。
5) 本ウイルスは家蚕に継代した後も家蚕に伝染力を有する。

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