1966 年 35 巻 3 号 p. 165-168
明→暗切替え後の恒暗下において確立される週期性が, 明暗刺戟に同調を始める時期は胚子のいかなる発育階梯かを知るため, 明→暗切替え時刻を24時間ずつ遅らせて検討した結果は,
1. 家蚕卵の胚子が明→暗刺戟に反応し始めるのは, 反転完了期と剛毛発生期との中間であって, それ以降の発育時期においてふ化の週期性が効果的に発現することがわかった。
2. この時期は胚子の諸器官発生のうえからみて脳や食道下神経節が発達する時期で, 明→暗刺戟に対する反応にはこれらのホルモン系が媒介していることが推察される。
3. 卵色色素を欠いている卵色変異系品種の卵は, 正常系品種の卵と同様にふ化前の明暗刺戟によって恒暗下においても明らかにふ化に週期性が確立される。このことは,「卵色変異系にふ化週期がみられないのは卵色色素がこれと密接な関係にあるからだ」とする考え方とは一致しない。