日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
キンケムシの細胞質多角体病について
石川 義文田辺 仁志
著者情報
ジャーナル フリー

1966 年 35 巻 3 号 p. 181-185

詳細
抄録
1. 1965年5月, 自然状態下 (愛知県蚕業試験場桑園) で細胞質多角体病に侵されたキンケムシを多数認めた。罹病した幼虫は一般に食欲, 運動などの減退を示し, 体色は固有の色調から暗橙黄色に変化する。罹病した幼虫の中腸は著しく白色化し, その組織細胞の細胞質に多角体の形成が認められた。
2. 多角体の大きさは, 大小不同で平均1.5μ内外で, 大きいものは4.0μ以上であるが, 多くは1.0μ以下である。多角体の形状は, 大形のものでは丸味を帯びた8角形, 6角形, 4角形などを呈するが, 小形のものではその形状の不明瞭のものが多く, 丸形に観察された。
3. このウイルスは, キンケムシ幼虫に対し経口接種で強い病原力を有することが認められた。その潜伏期は夏期で約7~14日間であった。
4. このウイルスは, 家蚕に対し感染性は認められなかった。
5. このように, 本病ウイルスはキンケムシに対し強い病原力を有する反面, 家蚕に対し感染性を示さないので, キンケムシの防除に利用することが可能である。
著者関連情報
© 社団法人日本蚕糸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top