日本蚕糸学雑誌
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絹のスズ (IV) 錯体処理に関する熱分析
小出 直人
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1969 年 38 巻 4 号 p. 301-306

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抄録

スズ (IV) 錯体 (ヘキサクロルスズ酸塩のアンモニウム塩ならびにカリウム塩) の水溶液処理によって得られた絹の熱的挙動を明らかにするため, 空気下において昇温による熱分析により検討した。得られた結果はつぎのとおりである。
1. 示差熱分析での主な熱反応は, 吸湿分の脱水による吸熱ピークのほかはブロードな発熱反応を示す。スズ塩付加によりこの発熱反応領域はさらに高温側に拡大する。
2. 熱重量曲線から, 熱酸化分解は280℃で最高となり, これはアミド結合の崩壊によることが推定される。
3. アミド結合崩壊前後の減量速度と加速度 (dw/dt, d2w/dt2) を求めると, スズ塩付加によりそれらのピークが約10℃以上高温側に転移することが認められる。またSnCl4とスズ錯体とでは絹との結合機構が同じでないとする示唆が得られた。

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