日本蚕糸学雑誌
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タンパク質繊維の染色加工に関する研究
IV. エリ蚕糸の染色性について (1)
清水 滉会田 源作松倉 せつ子
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1972 年 41 巻 2 号 p. 111-114

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抄録

数種の酸性染料に対するエリ蚕糸の染着速度曲線を求め, 同じ条件における家蚕糸のものと比較した。その結果次のことが認められた。
1) 染色条件によって多少の相違はあるが, エリ蚕糸の初期染着速度曲線が家蚕糸よりも急勾配のものが多かった。しかし, 全般的な傾向は両絹糸とも似たものであった。
2) 低分子量の染料は絹糸とのイオン結合による染着が大きいため, 染着座席としての末端アミノ基量の多いエリ蚕糸への染着率が家蚕糸よりも高かった。
3) 高分子量の染料では, その染着機構から家蚕糸のほうがエリ蚕糸よりも染着率が高いと考えられるが, 85℃染色ではエリ蚕糸のほうがいくぶん高い染着率を示した。これはミセル間隙への水の浸入による膨潤度の相違によるものと考えられる。
4) 染浴への中性塩の添加は, 絹糸への染料の分配が高められるため一部の染料では両絹糸とも染着率が上昇した。その上昇の程度はエリ蚕糸よりも家蚕糸のほうが大きかった。

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