1973 年 42 巻 2 号 p. 144-150
羽化前の蛹の中腸に含まれる蛋白質分解酵素は銅-エチレンジアミンあるいは臭化リチウムで可溶化したフィブロインおよび液状絹を加水分解する作用をもつことが明らかになった。
すなわち, 上記の蛋白質を基質に用いると寒天ゲル電気泳動によって, 蛹の中腸のプロティアーゼは陽極側に移動する1~数本の活性泳動帯として認められた。
さらに, 酵素の性質を知るため最適pH, 反応時間-活性曲線, 基質濃度あるいは酵素濃度と酵素活性との関係などを調べた。またカラムクロマトグラフィーによって単一のプロティアーゼ活性のピークがみられた。
前報およびこの論文において示した結果は蛹中腸のプロティアーゼの少なくとも一部は蛾の吐出液中の繭溶解酵素の起源になるのではないかという推論に対して根拠を与えるように思われる。