1973 年 42 巻 3 号 p. 193-198
紫紋羽病菌の桑根への侵入に対する桑根の防衛反応について, リグニン様物質およびコルク層形成の面から組織化学的に観察した。
1. 本菌菌糸がコルク組織に侵入する初期段階では, コルク形成層下にコルク層が増生された。
2. 本菌菌糸がコルク組織およびコルク形成層を貫通した段階では, 皮層組織の褐変部にリグニン様物質およびコルク層の形成がみられ, 病組織の拡大が阻止された。
3. 表皮を貫通した菌糸が皮層部に達し, 菌糸塊となって皮層部を上下に進展している場合, この菌糸塊のまわりをリグニン様物質が, さらにその外周をコルク層がとりまき病組織の拡大が阻止された。
4. 本菌が桑根へ侵入した場合, 必ずしもすべての桑根に防衛反応が現われるとは限らない。
以上のように桑根は紫紋羽病菌の侵入に対して防衛反応を示すが, 本菌の侵入を完全に阻止することはできないようにみられた。