日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
伊那市の農家の病蚕から分離した軟化病ウイルスの病原性
清水 孝夫
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 44 巻 1 号 p. 45-48

詳細
抄録

1968年長野県伊那市で発生した軟化病蚕から得た軟化病ウイルス (伊那株と仮称) について病原性, 中腸組織の感染像および抗血清による中和反応等について調査した。その結果
1. 伊那株ウイルスは日124号×支124号, 日132号×支132号などの蚕品種には強い病原性を示したが, 春嶺×鐘月, 錦秋×鐘和および豊年×研白など一部の品種には全く病原性を示さない現象がみられた。
2. 伊那株ウイルスを接種して感染発病した5齢蚕児の中腸皮膜を組織学的に観察したところ, 囲食膜が消失し, 円筒細胞の細胞質が崩壊し遊離した変性細胞が管腔内に離脱する像がみられた。
しかし盃状細胞の細胞質は空胞化, 粗大化するが退化現象はほとんどみられず, また円筒細胞内のピロニン好染性球状体 (basophilic body) の形成も認められなかった。
3. 伊那株ウイルスと従来から用いられている坂城株ウイルスの間においては交叉中和反応の成立が認められた。

著者関連情報
© 社団法人日本蚕糸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top