日本蚕糸学雑誌
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桑の冬芽の発育に及ぼすアブシジン酸およびジベレリンの影響
大山 勝夫岡 成美
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1975 年 44 巻 4 号 p. 321-326

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抄録

植物の休眠現象に関与している物質として知られるアブシジン酸 (ABA) およびジベレリン (GA3) が桑の冬芽の発育におよぼす影響を明らかにするために, つぎの二つの実験を行なった。
第1の実験では桑の分離芽を用い, 培地にABAまたはGA3を加えて培養し, 芽の発育の状態を調べ, 第2の実験では桑の切枝をABAまたはGA3液に24時間浸漬したのち, 砂床に挿して発芽の状態を観察した。その結果, 大要つぎのことが明らかとなった。
1. ABAを0.1~100mg/lの範囲で加えたMS+BA培地に, 鱗葉を取除いた分離芽を植付けて培養したところ, ABA 10mg/l以上の濃度で分離冬芽の発育は抑制され, ABA 100mg/l加えた場合, 茎葉の展開は全く認められなかった。
2. ABA 10mg/lおよび1mg/lを加えた場合には, 分離芽の基部にカルスの形成が促進された。
3. ABAと同時にGA3を加えて培養すると, ABAの抑制効果は部分的に打消されるようであった。しかし対照区に比較して, 葉重は少なかった。
4. 桑の切枝にABAを1~100ppmの範囲で処理した場合には, ABA 100ppm区において芽の発育展開がややおくれる程度で, 分離冬芽の場合に比較して, ABAによる発芽抑制効果は低かった。
5. これらの実験を通じて休眠していない芽にABAを与えることによって, 休眠芽を誘導することが可能であろうと考えられた。
しかし, 分離芽と切枝の場合, ABAによる発芽の抑制効果に差異が認められた原因については, 処理方法と関連してさらに検討しなければならない。

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