日本蚕糸学雑誌
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家蚕の蛹期における卵巣発育に伴う脂質の移動について
中曾根 正一
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1978 年 47 巻 3 号 p. 231-238

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抄録

家蚕の蛹期における脂肪組織, 体液および卵巣の脂肪酸含量, 脂肪酸組成の変化ならびにこれら組織間の脂肪酸移動について検討した。その結果は次の通りである。
1. 蛹期には, 脂肪組織の脂肪酸含量が減少し, 逆に卵巣の脂肪酸含量が増加した。しかし体液の脂肪酸含量は若干の増加にとどまった。
2. 蛹期における脂肪組織, 体液および卵巣の脂肪酸組成は類似しており, 飼料中の肪脂酸組成とも関連してC16:0, C18:1, C18:2が主成分であった。しかしながら組織により若干異なっていた。
3. 蛹化直後の蛹に14Cパルミチン酸を注射すると, 速かに脂肪組織に取り込まれたのち卵巣に移行した。また注射6日後における14Cの分布をみると, 脂肪組織ではトリグリセリド, 体液ではジグリセリドと燐脂質, 卵巣ではトリグリセリドと燐脂質にそれぞれ分布していた。
4. 各蛹期に14Cパルミチン酸を注射すると, 初期には脂肪組織に強く取り込まれ, 中期以降卵巣への取り込み, 14CO2への呼出が増加した。この増加は卵巣の発育と平行しており, 脂肪組織脂質が卵巣に移行することが明らかになった。

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