日本蚕糸学雑誌
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パークロルエチレン分解生成物および添加安定剤による絹の脆化および変色について
桑原 昂仲道 弘多々良 尊子
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1980 年 49 巻 2 号 p. 81-85

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抄録

パークロルエチレン (Cl2C=CCl2, パークレン) 分解生成物 (2種) または添加安定剤 (3種) による絹の変色および脆化について調べた。
1. pHについては, 分解生成物である塩化トリクロロアセチル, トリクロル酢酸は強い酸性, 添加安定剤であるプロピルアミンはかなり強いアルカリ性, フェノール, エポキシプロパンは中性に近い弱酸性であることが判った。
2. 強伸度の低下は, トリクロル酢酸が最も大きく, フェノール, エポキシプロパン, プロピルアミンは同位でこれに次ぎ, 塩化トリクロロアセチルはほとんど変化がないことが判った。
3. 黄変度はプロピルアミンが最も大きく, 次いでトリクロル酢酸, 塩化トリクロロアセチル, フェノール, エポキシプロパンの順であることが判った。
4. 退色率は酸性染料, 1:2型金属錯塩染料ともにトリクロル酢酸が大きく, 40℃での塩化トリクロロアセチルがこれに接近し, 次いでフェノール, プロピルアミン, エポキシプロパンの順であるが, 1:2型金属錯塩染料の方がやや退色しにくいことが判った。
5. このような結果から, 絹はパークレン分解生成物のうち特にトリクロル酢酸によって脆化, 変色し次いで添加安定剤のうちプロピルアミン, フェノールの影響をうけることが判ったが, 実際のドライクリーニングでは, これらが相互に作用するので脆化, 変色または退色が一層助長され易いことが想定される。

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