日本蚕糸学雑誌
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單性生殖蠶の遺傳學的並に細胞學的解析
川口 榮作
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1934 年 5 巻 1 号 p. 1-20

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抄録

(1) 著者は1925年以來3同に渉つて。ある日支交雑種の不受精卵を自然に放置し或は是に鹽酸の刺戟を加へることによつて、單性生殖的發生を促し多數の蟻蠶を得た。その中雌雄の判明する迄發育せるものより、その割合を見るに総計雌15, 雄41である。3囘共にその比は一定せぬが常に雄は雌より多數である。
(2) 其後遠心力を受精直後の卵に加ふることによつて、又單性生殖卵を得たが、この場合は常に雌のみを生する。
(3) 單性生殖蠶の遣傳因子の分離と雌雄の關係は、その親がヘテロの場合には、弦に生する雌は必す亦ヘテロで、雄は常にホモである。
(4)(3) の事實は次の機構を以て説明せられる。即ち雌の生成はhaploid卵核が第一分割以後互に隔合することによつて起り、雌の生成は減數分裂の際放出せる極體の一個が卵核と結合することによつて生じたものである。
(5) 單性生殖蠶は細胞學的にdiploidであると云ふ佐藤氏の観察を確め得た。
(6) 解剖學的には單性生殖蠶の多くの雄に精巣發育不完全のものが觀られた。
(7) 佐藤氏が單性生殖蠶に観察した異常蠶中大形卵を産す雌はtetraploidで、小形卵を産するものはtriploidである。

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