日本蚕糸学雑誌
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人工飼料無菌飼育の育蚕体系への導入に関する研究
III 配蚕時における蚕の微生物検索
松本 継男松原 藤好大西 盛夫林屋 慶三
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1981 年 50 巻 5 号 p. 359-365

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抄録

人工飼料の導入にともない筆者らは稚蚕を無菌環境下で飼育し, 壮蚕期に桑葉機械育へと配蚕する体系を考え, さらに配蚕児に何らかの健康調査を実施し証明済の蚕児を配蚕する体系を考えた。そこで微生物学的な「品質評定」を伴った配蚕児検査方式を検討するため, 本学附属農場に設置された家蚕人工飼料無菌飼育施設における飼育環境および蚕の保有微生物 (細菌・真菌類・ウイルスなどの) 検索を行い次の結果を得た。
1) 稚蚕飼育用の無菌室の微生物検索は, インピンジャー法で実施した。稚蚕に対する検索は, 細菌・真菌類は培養による分離・同定法で, NPVとCPVは顕微鏡下での多角体の確認で, またIFVは血清学的な診断によった。
2) 配蚕1日前の飼育室内の空気からは, 全蚕期を通じて細菌は, 3~6/m3, 真菌類は32~110/m3の総菌数が定量された。また分離菌は, Bacillus, Staphylococcus, Enterococcus, Pseudomonas, Proteus などの細菌と, Penicillium, Aspergillus, Cladosporium, 酵母などの真菌類が主として分離同定された。これらの微生物は, 夏蚕期にもっとも多くの生菌数および菌種が確認された。
3) 就眠1日前の3齢蚕からは, 夏蚕期に1度だけ Staphylococcus, Enterococcus および酵母が分離された。春蚕期秋蚕期では, 細菌, 真菌類およびウイルスはまったく検出されなかった。
4) このような環境下で飼育され,上記微生物の検索された蚕は, 桑葉機械育へと配蚕・飼育を継続しても, 蚕病の発生はまったく認められず, 安定した飼育成績が得られた。

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