日本蚕糸学雑誌
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家蚕変態期の中腸における酸性フォスファターゼおよび核酸分解酵素の活性
成 洙一小林 正彦吉武 成美
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1983 年 52 巻 3 号 p. 191-197

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抄録

カイコの中腸における加水分解酵素の活性の変態にともなう変化を組織化学的ならびに生化学的方法によって調べた。酸性フォスファターゼは幼虫5齢末期から活性が上昇し, 吐糸期には極めて高い活性を示した。これに対して蛹の中腸皮膜では蛹齢5日までほとんど活性が見られなかった。その後, 成虫化発育に伴って再び酵素活性が現われ, 羽化時には高い活性を示した。これらの酸性フォスファターゼの活性の変化は細胞内のリソゾームの消長とほぼ一致した。一方, 退化した幼虫の中腸を主成分とする蛹の腸管内容物では, 常に高い酵素活性が保持されていた。酸性核酸分解酵素 (DNase, RNase) の活性の変動も酸性フォスファターゼの変化とほぼ一致していた。以上のことから変態期の中腸では各種加水分解酵素が関与する組織の崩壊が一定の変態プログラムによって行われることが明らかになった。

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