日本蚕糸学雑誌
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カイコの5齢期における翅原基の発達
川崎 秀樹岩下 嘉光
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1987 年 56 巻 2 号 p. 89-98

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抄録

カイコの5齢期の翅原理について, その超微形態の観察, DNA・RNAおよび蛋白質合成, 翅原基の成長ならびに有糸分裂について調査した。5齢の初期では細胞の活性は低く, rERの発達は低調であり, 気管枝束は翅部の基部に存在する。5齢の中期から後期にかけて原基細胞の代謝が活発となる。すなわち, 原基細胞内のrERは増加し, 核膜の凹凸が顕著となり, ミクロビリが伸長する。気管枝の進入は6日目にみられ, 翅原基の表皮組織の外側への外転とクチクラ分泌は10日目に観察された。上記の超微形態の変化, とくに細胞内小器官の発達に伴って, RNA合成及び蛋白質合成は齢の後半に高くなった。翅原基の面積は齢初期の2mm2から前蛹期の20mm2にまで増大し, 有糸分裂は4日目と9日目に2度のピークがみられた。これらの結果から, 5齢期の翅原基の成長と分化は幼若ホルモンとエクジステロイドの影響によるものと推察される。

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