日本蚕糸学雑誌
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精練剤が酸性染料の吸着速度に及ぼす影響
絹の染色機構に影響を及ぼす諸因子に関する研究 第2報
中嶋 哲生清水 慶昭四方 正義木村 光雄
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1987 年 56 巻 6 号 p. 522-526

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抄録

精練剤を異にする絹糸の60, 70, 80℃における等温吸着平衡並びに半無限浴での初期吸着速度を測定し, 精練剤が染色性に及ぼす影響について検討した。現行蚕品種から繰糸した生糸を, 炭酸ナトリウム, 炭酸カリウム, ケイ酸ナトリウム, ケイ酸カリウム及びわせ藁灰汁で精練して用いた。染料は特級試薬を水で再結晶したC. I. Acid Orange 7を用いた。その結果は以下のようであった。1) 等温吸着平衡における染料の吸着量は, ケイ酸塩で精練された絹糸の方が炭酸塩によるものよりも若干小さな値を示した。2) 炭酸ナトリウムと炭酸ウリウムで精練された絹糸の初期吸着速度に差は見られなかったが, ケイ酸塩で精練された絹糸は炭酸塩で精練された絹糸より大きかった。3) 藁灰汁による精練の作用は, ケイ酸カリウムのそれと類似していた。この様に精練剤の違いによって酸性染料の初期吸着速度に影響を及ぼす事が判った。

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