日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
柞蚕糸の物理的性質について
飯塚 英策岡地 康文大林 伸吉佐藤 恭裕清水 実福田 明夫
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 60 巻 6 号 p. 495-500

詳細
抄録

日本産柞蚕糸について, その物理的性質を雌雄間で比較した。雌の繭糸は雄の繭糸と比較して平均解野糸長と平均繊度がともに大, 糸長と繊度の偏差も大であった。一粒の繭糸全長に亘って動弾性率, 伸度, 結晶化度および密度が繊度に関して有意な線型相関を示す。また, このような相関が多数の繭糸の間で繭層部位にかかわらず認められる。相関は伸度について正である外はすべて負で家蚕糸同様, 細繊度繭糸ほど結晶性が高く, この傾向が物理的性質に反映している事が知られた。強度については雄の繭糸のみ負の相関を示す。雌雄の繭糸を比較すると雄の繭糸の方が結晶性が高く物理的性質における両性の相違がみられるが, 雌雄間の平均繊度差を考慮すると差の有意性は伸度の場合を除き消失する。すなわち伸度はなお雌の繭糸の方が大であり, 強度における相関の相違とともに雌雄間の本質的な差の存在が窺える。

著者関連情報
© 社団法人日本蚕糸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top