1995 年 64 巻 6 号 p. 493-497
マツカレハ細胞質多角体病ウイルス (CPV) を接種したマツカレハより, 多角体の形状が外観六角形のおむすび型をしている, 本来のマツカレハCPVの多角体の形状と異なるCPVが分離された。その増殖様相を電子顕微鏡により観察したところ, virogenic stroma 内の中心に近い部分でウイルスの形態形成がなされ, ある程度の量のウイルス粒子が形成されると, その場で多角体に包埋された。virogenic stroma 内の周縁部にはウイルス粒子と多角体は認められず, 従来報告されている鱗翅目昆虫のCPVとはウイルスおよび多角体の形態形成の場が異なっていた。このCPVは, 中腸円筒細胞, 盃状細胞以外にも筋肉細胞, 気管皮膜細胞等に感染が認められ, また, アメリカシロヒトリ, ヒメシロモンドクガ, カイコ等にも感染することから, 組織特異性や宿主の範囲の広いウイルスであると考えられた。