抄録
クワの栽培条件と病害発生との関係を調べる目的で, 施肥量を変えて栽培した品種「しんいちのせ」および「落井」葉の, 各種病原糸状菌に対する感受性の差異を調べた。その結果, 弱病原力菌 (Colletotrichum acutatum, Glomerella cingulata, Fusarium solani および Myrothecium roridum M9623) に対する両品種の感受性は, 施肥量が増すに従い高まる傾向が見られた。また, 強病原力菌 (C. dematium およびM. roridum M9403) に対しては,「落井」ではいずれの葉も高い感受性を示したが,「しんいちのせ」では施肥量が過剰および不足した状態で感受性が高まる傾向が認められた。以上の結果から, 適正な肥培管理が病害の発生抑止に大切であると示唆された。また, 上記の各栽培葉で生産されるファイトアレキシン (PA) の誘導量と感受性程度との関係を調べた結果, 弱病原力菌に対しては, PAの誘導量が多い葉ほど強い抵抗性を示す傾向が見られた。よって, これらのPAが, 弱病原力菌に対する抵抗性の1因子として機能している可能性が示唆された。