高分子論文集
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一般論文
コバルトポリピロール錯体担持炭素粒子の調製条件の検討による燃料電池用カソード触媒としての高活性化
湯浅 真小柳津 研一村田 英則田中 健山本 昌邦
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2006 年 63 巻 9 号 p. 601-606

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抄録

コバルトポリピロール錯体担持炭素粒子 (CoPPy/C) の活性中心であるCo-N4構造を高密度に修飾させることを目的として, 新たに触媒調製法を種々検討することにより, 酸素還元触媒としての高活性化に成功した. 触媒担体であるカーボンブラックへコバルトポリピロール錯体を高密度に修飾させるため, (1) 流動層電解重合による配位子膜の形成, (2) 酢酸コバルトを用いた錯形成, (3) 熱処理の各操作を繰返し施す (多重電解重合法) ことによって, 炭素粒子上にコバルトポリピロール錯体に基づく触媒層を多重に形成させることを可能にした. X線光電子分光法 (XPS) から, 炭素粒子表面に活性部位を構成するコバルトおよび窒素原子濃度が, 従来までの触媒に比べ著しく増加していることが確認された. 本触媒をNafion™溶液に分散させ, 基盤電極上にキャストすることにより擬似MEA (膜電極接合体) を作製し, これを用いた酸素還元反応では, CoPPy/Cにおいて最も貴な電位 (Ep=0.31 V vs. SCE) および反応選択度 (反応電子数n =3.3) で酸素の四電子還元が進行することが明らかになった. 得られた触媒の活性点のさらなる高密度化を試みるために, 触媒調製プロセス (3) の最適化として, 熱処理温度, 熱処理時間および昇温速度を詳細に検討した結果, 著しい活性向上が認められ (Ep=0.42 V vs. SCE, n =3.8), 高活性を有する新規な燃料電池用カソード触媒としての可能性が実証された.

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© 2006 公益社団法人 高分子学会
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