2010 年 67 巻 5 号 p. 304-311
本研究では,表面ゾル-ゲル法により作製したチタニア/ポリマーの交互積層膜をプラズマ処理によりポリマーを除去することでナノ孔を有する薄膜を作製した.作られた細孔の大きさは,鋳型として用いたポリアクリル酸(PAA)やポリビニルアルコール(PVA)の水中分子形状に密接な関係があり,DLS による粒子径測定の結果,それぞれ 4.95 nm と 21.1 nm であった.AFM 測定により TiO2 膜上に固定化されているポリマーは,水中の粒子形状を反映して,異なる大きさのナノ凝集体を形成していることが観察された.QCM 測定により既知の分子サイズをもつ C60 やシトクロム c(Cyt. c)の吸着評価を行ったところ,PAA 膜はプラズマ処理前後において吸着能に変化が見られなかったが,PVA 膜はプラズマ処理後において C60 や Cyt. c に高い吸着性を示した.さらに,UV-vis スペクトルや XPS 分析を用いてそれぞれの吸着を評価したところ,やはり PVA 鋳型膜においてこれらの吸着に帰属される成分の顕著な増加が確認できた.以上の結果から,プラズマ処理前後において PAA 膜には 1 nm よりも小さい孔が,PVA 膜には C60 や Cyt. c 両方に吸着可能な 3 nm 以上のナノ孔が作られたことが明らかになった.