高分子論文集
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総合論文
常温大気中で高効率蓄光機能を示す有機材料
平田 修造安達 千波矢渡辺 敏行戸谷 健朗
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2013 年 70 巻 11 号 p. 623-636

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抄録

有機物において1秒を超えるような長い励起三重項状態は脱酸素の環境下かつ77 Kのような極低温下でのみ観測されると信じられてきた.これは,室温大気下では,有機物の室温での激しい振動運動や拡散運動,そして材料中に存在する酸素が材料の長い励起三重項状態を失活させるからである.筆者らは,ヒドロキシステロイド中に重水素置換された芳香族化合物をドープしたホスト–ゲスト薄膜は,室温大気下で励起三重項状態からの熱失活が大きく抑制されることを見いだした.このホスト–ゲスト薄膜は,室温大気中での励起三重項状態からの熱失活速度が十分遅いため,室温大気下で数秒レベルの長い励起三重項状態が観測された.結果として,この材料から室温大気中で1秒以上の寿命を有するリン光発光機能(蓄光機能)が観測された.材料を最適化することで,室温大気中で10%を超えるリン光量子収率と1秒を超えるリン光寿命を同時に有する有機蓄光材料の創製に成功した.

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© 2013 公益社団法人 高分子学会
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