抄録
本研究では,ビスフェノールA (BPA)とシクロデキストリンからなる錯体と,気相表面ゾル–ゲル法によって形成される酸化チタンマトリックスを利用した有機・無機ハイブリッド化による新しい分子認識レセプターの設計を試みた.作製したナノ複合薄膜から鋳型として用いたBPAを取り除いて得られたインプリント薄膜のゲスト選択性を水晶振動子(QCM)を用いて検討した.その中でもTiO2/(β-CD/BPA,2:1)インプリント薄膜は,他の薄膜よりもBPAに対する選択性が高く,十分な検出感度を示した.また,BPAとβ-CDとの錯体比を核磁気共鳴分光(1H NMR)測定から評価し,ゲスト分子の吸着機構を議論した.結合定数から求めたTiO2/(β-CD/BPA,2:1)のBPAインプリント膜のBPA選択性は,非インプリント膜に比べて約7倍以上高く,約50 ppb以下の高い検出感度を示した.