2013 年 70 巻 9 号 p. 459-475
クリーンエネルギーとして太陽光エネルギーの利用が求められる中,水分解により水素発生が可能であるが紫外線にしか応答しないTiO2光触媒に対して,可視光応答型光触媒が求められており,無機半導体においてその研究が盛んである.一方で,電気エネルギーへの変換系である有機薄膜太陽電池は全可視光応答を達成している.この太陽電池の活性層をそのまま気相や水相において,光触媒とすることができる.無金属のフタロシアニン(H2Pc)はp型半導体,ペリレンテトラカルボキシルビスベンズイミダゾール(PTCBI)やフラーレン(C60)はn型半導体であり,これらのpn接合体が高い量子収率(CO2発生分子数について0.4–0.5)で揮発性有機物をCO2にまで無機化できる.こうした有機半導体中の電荷輸送特性や固/液界面における酸化還元特性は光電気化学的手法により明らかにすることができる.また光電気化学系においては,p型半導体に遷移金属を導入したり,助触媒としてIrO2を用いることにより水の酸化による酸素発生をさせたり,フラーレンの表面に助触媒のPtを担持させて水の還元による水素発生を起こしたりすることが可能である.また,低コスト製造の可能なプロセスである再沈殿法によって得られるp型,n型半導体ナノ粒子複合体は,pn接合による光電気化学特性や電極に固定せずに光触媒作用を示すことも明らかとなっている.