2014 年 71 巻 10 号 p. 457-466
本報では,カルボン酸を有する両親媒性N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)重合体の集合挙動,ならびにさまざまな金属イオン・金属錯体との複合化について検討した.とくに重合度の低い領域のNIPAAm重合体においては,カルボン酸のプロトン化/脱プロトン化が効果的に働き,下限臨界共溶温度(LCST)の温度範囲ならびにLCSTの有無を制御できることがわかった.さらにNIPAAm重合体に金属イオンを添加すると,ナノファイバーやベシクルネットワークなどを形成できることが明らかとなった.また,Cu2+の金属イオンは,NIPAAmオリゴマー水溶液中で,LCST型相転移により色調の変化をもたらす金属イオンの配位構造の変化が見られた.すなわち,NIPAAmオリゴマーの相転移現象を利用して配位構造を制御することができるような金属イオンが存在しており,その電子状態をも制御することができることが示唆された.