和紙から撚糸することによって作製される和紙繊維の物質吸着能に関する基礎的検討を行うため,3種類の製造元,製造方法の異なる和紙,それぞれの和紙から一定の方法で作製された和紙繊維および織物,また,参照としての綿を用いてタイプの異なる三種類の染料に対する吸着能について検討した.その結果,原料の和紙の違いによって三種類の染料に対する吸着能に大差が生じ,またその繊維化によってそれぞれの原料の和紙と比較して吸着能が変化することが明らかとなった.和紙繊維のもつ吸着水に関する定量的検討,および,和紙および繊維化後の和紙繊維の分子内水素結合に関する検討から,繊維化により分子内の水素結合性や配向に何らかの変化が発生し,そのことが和紙繊維の吸着能や抗菌性などの新たな機能の発現に影響を及ぼしている可能性があることが明らかとなった.