2014 年 71 巻 7 号 p. 293-301
筆者らはこれまで,外部からの温度変化に敏感に反応する温度応答性高分子ポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)を高速液体クロマトグラフィーの分離担体に応用し,固定相表面の性質を温度により制御することで分離を達成してきた.この方法は,水系移動相のみで行うことができるため,有機溶媒の組成比を変えて分離を行う従来のシステムとは異なる新しい概念であり,環境にやさしい“Green Technology”として注目されている.さらなる分離選択性を目指し,PNIPAAmにプロリン誘導体やナフチルアラニン誘導体を共重合させた.その結果,プロリン共重合体ではCH-π相互作用によって,ナフチルアラニン共重合体ではπ-π相互作用によって分離選択性が向上した.ステロイド医薬品や生理活性物質の分離に効果を示したことから,今後医療や環境などの分野への応用が期待される.