高分子論文集
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総合論文
レーザー温度ジャンプ型過渡透過光計測法による温度応答性高分子水溶液の相分離ダイナミクスの研究
多田 貴則喜多村 曻東海林 竜也坪井 泰之
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2015 年 72 巻 12 号 p. 707-720

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抄録

温度応答性高分子の水溶液が示す相分離現象は,基礎的に興味深いだけではなくドラッグデリバリーシステムなどへの応用が期待されるため,これまで精力的に研究されてきた.しかしながら,現象を特徴づける重要なパラメータの一つである相分離速度に関する知見はこれまで十分に得られていなかった.筆者らは独自に開発したレーザー温度ジャンプ型過渡透過光計測装置を用いて温度応答性高分子水溶液の相分離速度を精密に決定してきた.本報では,poly(N-isopropylacrylamide) (PNIPAM)水溶液の相分離速度に対する溶液濃度,高分子の分子量,立体規則性の効果を中心に述べる.また,相分離を高速化するための指針として,①水溶液濃度を高くすること,②最適分子量に設定すること,③立体規則性を高めることの3点を明らかにした.これらの知見は,高速応答を目指した新規機能性材料の開発指針になると期待される.また,相分離機構の解明にも貢献すると思われる.

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© 2015 公益社団法人 高分子学会
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