2015 年 72 巻 6 号 p. 341-353
近年,外部刺激によって,あるいは自発的に組換わる特殊な共有結合を有する高分子に関する研究が,新たな材料開発の観点から盛んに行われている.このような平衡系の共有結合を有する高分子は,熱力学的に安定な構造を有するとともに,外部環境の変化に応じてその構造が変化するという特徴をもつ.本報では筆者らが精力的に研究を進めてきた,加熱によって特定の共有結合がラジカルプロセスによる開裂と再結合の平衡状態へと変換される「アルコキシアミン」骨格を用いたラジカル反応性高分子に関連する研究成果についてまとめた.アルコキシアミン骨格を有する高分子は従来型の共有結合のみからなる高分子とは異なる特性を有していることが明らかとなり,新たなラジカル反応性高分子としての可能性を示した.