2016 年 73 巻 4 号 p. 347-353
少量の酸化グラフェン(GO)をポリビニルアルコール(PVA)へ導入したコンポジット繊維をゲル紡糸・二次延伸によって作製し,GO添加が引張物性に及ぼす影響を調べた.導入したGOはPVA中で高分散し,繊維軸方向に配向していると推定された.2 GPa以上の強度ならびに40~50 GPa程度の弾性率を有する高性能PVA繊維マトリックスに対して0.5 wt%のGOを添加することで,強度および破断伸度は低下し,ヤング率は3~5 GPa程度増加した.この引張物性の変化は,PVA/GO間の界面接着力とPVAマトリックスからGOへ伝達されるせん断応力の力関係によるものと推定した.すなわち引張応力が低い領域では界面接着力がせん断応力を上回りGOが繊維の引張変形を抑制するために弾性率が増加し,破断点近くの高応力域ではせん断応力が勝って界面剥離が起こるために強度・伸度が低下したと考えられる.