2017 年 74 巻 2 号 p. 75-84
本報では,スチレン–エチレンブチレン–スチレントリブロック共重合体が形成する球状ミクロ相分離構造の体心立方(BCC)格子の薄膜中での自発配向について報告する.具体的には,BCC格子の自発的優先配向に与える膜厚の影響と熱処理時間の影響を明らかにすることを目的とした.そのため,二次元小角X線散乱(2d-SAXS)測定を行った.その結果,試料表面近傍で,BCC格子の(110)面が試料表面に対して平行に自発的に配向し,その配向層の厚みが4–5 µm程度にまで達することがわかった.この値は,これまでにシリンダー状,ラメラ状のミクロ相分離構造について報告されている表面誘起配向の到達距離(200–500 nm程度)を遥かに凌ぐものである.ただし,いくら長時間熱処理をしたとしてもこの到達限界値(4–5 µm程度)を超えることはできないこともわかった(15時間程度で限界値に達する).