2019 年 76 巻 3 号 p. 248-256
ゴム材料中の圧電セラミックス粒子を電場により厚さ方向に配向した配向型圧電ゴムにおいて,ばね定数の低減を目的として,従来よりも厚い配向型圧電ゴムを作製した.作製手法の検討に際して,電場下での強誘電体粒子の配向に関する数値計算シミュレーションを行うことで,最終的な配向状態への粒子の初期位置の影響を把握した.その結果を実験で再現するために,配向型圧電ゴム作製の際の電場印加の直前に上下反転を行う手法を行った.粒子濃度が10~20 Vol%の条件では,反転する手法で粒子の鎖状配向の形成が促進され,反転せずに作製した配向型圧電ゴムよりも圧電性能が向上することを見いだした.粒子濃度が30 Vol%の条件では,反転する手法を改良し,粒子の初期位置を制御することによって,圧電性能がさらに高い配向型圧電ゴムを作製することができた.本報で作製した厚さを増した配向型圧電ゴムは,従来の薄いタイプと比較すると圧電性能が低下したが,ばね定数の低減を実現した.