抄録
共有結合やイオン結合よりもはるかに弱い水素結合を利用したN-アルキルアクリルアミドのラジカル重合の立体特異性制御について筆者らの研究をまとめた.モノマーの水素結合性錯体の構造によって立体特異性が変化し,幅広い立体構造(イソタクチック,シンジオタクチック,ヘテロタクチック)のポリマーを得ることに成功した.さらに,ポリ(N-アルキルアクリルアミド)水溶液の相転移挙動に及ぼす立体規則性の影響について述べる.立体規則性とN-置換基の組合せによって相転移挙動が大きく変化し,とくにN-n-プロピルアクリルアミド単位がシンジオタクチックまたはイソタクチックな立体構造である長さ以上連なると明確なヒステリシスが誘起されることを見いだした.また,立体構造の異なるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)のNMRスペクトルの多変量解析による立体規則性解析についても紹介する.