論文ID: 2015-0009
より安全な医療,より高い生活の質を提供しうる新規な医療用材料,医療用デバイスの開発が望まれている.筆者らは,精密重合技術を用いることによる高分子の形態制御を通じ,新規医療用ポリマー材料の開発を行っている.本報では,精密重合によって得られる星型ポリマーによる血液適合性,抗菌性表面の創出,がんの放射線治療における線量の低減を目指したX線増感剤の開発へ向けた展開を紹介する.親水性ポリマーであるポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)と疎水性ポリマーであるポリ(メタクリル酸メチル)の2種類の枝ポリマーを同一の分子内に有するヘテロアーム星型ポリマーはポリエチレンテレフタレートフィルムに単純にドロップキャストでコートするだけで血小板の粘着や大腸菌の接着を大幅に抑制し,医療用デバイスの機能,信頼性を高められる可能性を見いだした.また,核に希土類錯体であるEu錯体を導入した星型ポリマーはEu錯体に基づく蛍光性を示すとともに,プラスミドDNA (pDNA)と混合してX線を照射すると効率的にpDNAを切断し,X線増感剤としての利用の可能性を見いだした.