論文ID: 2015-0070
疎水基を側鎖に部分的に置換した親水性高分子は,水中において高分子鎖が会合し,三次元ネットワークのナノゲル構造を形成する.このような会合性グラフト高分子の会合により得られる自己組織化ナノゲルは,ポリマーミセルと比較して含水率が非常に高いという特徴を有している.とくに,天然高分子の多糖に会合基を導入して得られる多糖ナノゲルは,生体適合性と生分解性を示すのみならず,タンパク質や核酸などの生体分子を安定に内包できるため,ドラッグデリバリーシステム(DDS)などへ応用可能なナノキャリアとして目覚しく発展してきた.また近年では,多糖のみならず,疎水化ポリペプチドによる自己組織化ナノゲルの合成,およびそのバイオ応用の研究が発展しつつある.本報では,静電的相互作用を利用したポリイオンコンプレックナノゲルや刺激応答性高分子を側鎖にもつ会合性グラフト高分子の自己組織化とその機能について,筆者らの最近の研究を中心に解説する.