論文ID: 2016-0024
アクリル酸エステルのα-置換基は重合にかかわるビニル基に直結し,その重合性に大きく影響することから,ビニル基や重合活性種の電子状態を調整する基が導入されることが多い.これに対し,筆者はα-置換基の周辺環境を意識した分子設計に基づく高分子合成を提案する.α位に直接機能団を置換すると,ポリマーの主鎖近傍に機能団を配置でき,高分子特有の隣接基効果を最大限に引き出すことができる.また,α-置換基を起点とする主鎖分解など,ビニル基の直接修飾ならではの反応性を賦与することも可能である.一方,アミノ基を有する置換基を導入すると,これらがカルボニル基と水素結合を形成し,特異な反応性が発現する.α位にハロメチル基を置換すると,高活性ハロゲン化アリルとしての反応性が現れる.本報では,これら最新の成果を体系的に紹介し,ビニル基周辺を意識したモノマー設計の意義について議論する.