抄録
天然核酸塩基は高い二重鎖安定性と直交性という化学的に魅力的な性質をもつ.この天然塩基対に代わる新たな塩基対を開発することができれば,天然がもちえない機能をもった核酸材料の開発が可能となる.筆者らは非環状骨格であるD-threoninolに着目し,これを介した疑似塩基対の開発を行ってきた.また,疑似塩基対の化学構造が天然塩基対とまったく異なるにもかかわらず二重鎖の安定化と直交性という天然塩基対の化学的機能を模倣できることを明らかにした.本報ではとくに疑似塩基対の安定性に焦点を当て,筆者らの最近の研究成果と今後の展望について概説する.