抄録
医療,非破壊検査,ソナーなどで広く用いられている超音波を,高分子材料のミクロな構造解析に応用すべく,新しい超音波散乱技術の開発を行ってきた.本報では,おもに二つの手法について最近の研究成果をまとめる.一つ目は,動的超音波散乱(DSS)法であり,これは動的光散乱(DLS)法の超音波版である.高度に着色もしくは乳濁した微粒子分散系において,粒子径分布や凝集状態を解析することが可能である.また,ブロードバンドパルスを用いているため,位相を活用して試料の位置情報を取得することができ,粒子の構造を可視化することも可能である.二つ目の手法は超音波スペクトロスコピー(US)法である.この手法は古くから用いられている,いわゆる吸収法であるが,散乱関数論を組合せ,液体中に浮遊する微粒子一個の硬さ情報を,非接触で希釈乾燥することなく評価可能である.最近では,マイクロカプセルのシェル部分の弾性率やシェル厚みを評価する技術に発展したので,この研究例についても述べる.