1989 年 46 巻 1 号 p. 51-57
引張り延伸した超高分子量ポリエチレンゲルフィルムについて, DSCより, 絡み合いによって拘束される結晶組織と拘束を受けない結晶組織 (六方晶に転移する部分と斜方晶から融解する部分) の比率を求めた. 延伸フィルム及び部分融解フィルムの強度, ヤング率に対する分子量, ゲル作製時の濃度の影響を調べ高次構造との関係を検討した. 延伸過程で結晶は順次拘束され, その比率が飽和していく一方で絡み合いの破壊が顕著になり拘束から解放される結晶組織が増加する. 絡み合いの破壊はヤング率より強度に大きく影響した. 延伸フィルムを緊張状態で部分融解すると大きくスーパーヒートする拘束組織のみを残すことができる. 高延伸試料中において拘束から解放された結晶組織は, 拘束された部分より高い力学的性質を示す伸張の進んだ部分である.