1993 年 50 巻 1 号 p. 19-25
従来, 自動車用バンパーなどには, 耐衝撃性ポリプロピレンにエチレンプロピレンゴム (EPR) が20~30wt%添加された材料が広く使用されている. この種の材料においては, その量比からポリプロピレン (PP) の海にEPRが島として存在するとする考え方が定説であった. しかし, そのような考え方では物性の解釈が困難な場合があり, 今回, 高分解能電子顕微鏡観察, 粘弾性解析, パルスNMRなどにより詳細な構造解析を実施した. その結果, EPRの一部とPP非晶部とが相互溶解して一体となりエラストマ-化するとともに, 三次元的に連結しているEPR相が存在することがわかった. 結論として, この種の材料の構造は従来の定説であるPPマトリックスにEPRが分散する構造ではなく, PP非晶相とエラストマーから成るマトリックス中にPP結晶ラメラが分散する構造であること, および, その構造モデルによって, 従来は説明困難であった物性の解釈が可能となることが判明した.