酢酸水溶液をキャスト溶媒として, キトサン限外ろ過膜を相転換法により調製した. 膜性能を向上させるため, 種々の有機溶媒をゲル化浴剤として用い, 膜形成能と膜性能に対するゲル化浴剤の効果を, ゲル化挙動の観点から検討した. 良好な膜形成能を示すゲル化浴剤は, キトサン溶液とゲル化浴剤との混合における熱変化によって, 2群に分類された. 混合時に吸熱変化を示すゲル化浴剤群では緻密な膜を形成し, 発熱変化を示す群では粗な膜を形成した。また発熱変化を示すゲル化浴剤群では, より流動度の高いゲル化浴剤ほど, より粗な膜を形成した. これらの結果は, キャスト溶媒の水に対するゲル化浴剤の親和性, ならびにキトサン濃厚溶液相の水とゲル化浴剤の相対交換速度が膜性能を決める因子として重要であることを示している.