本研究の目的は, 高分子不均質膜の表面特性と海洋生物の付着との関係を明らかにすることである. 分子中に親水性のエチレングリコール・セグメントをもつポリジメチルシロキサンおよびポリジメチルージフェニルシロキサンの2種のポリマーブレンド系からその成分比に応じた, 特有のラメラ型相分離構造膜が得られた. これらの高分子膜表面の特性値化のために, 表面自由エネルギーとモルホロジーが調べられ, ついでタンパク質の吸着性が評価された. 一方, 実際の海中浸漬実験により, それら材料表面への海洋生物 (フジツボ, アオノリ) の付着性試験を行った. この結果と表面特性との関係を論じ, 相分離構造膜表面が, 生物付着防止に効果のあることが実証された. またタンパク質 (γ-グロブリン, フィブリノーゲン) の吸着特性は生物付着性と関係があり, 各種成分比の中で最低値を持つことがわかり, 医用高分子材料における血栓形成防止の機構との類似性が見られた.