抄録
懸濁重合で得られたポリ塩化ビニルおよびエチレン/塩化ビニル共重合体中の微細構造を, 1Hおよび13CNMRを用いて解析した. 1HNMRによる解析の結果, 立体規則性度の違い, アリル末端基および分子内二重結合量は共重合体中のエチレン含量とは相関が見られなかった. 共重合体中の分枝構造については, エチレン/塩化ビニル共重合体を, 水素化トリ-n-ブチルスズで塩化ビニル部分を完全にポリエチレン構造に還元した試料を用いて, 13CNMRで解析した. その結果, ポリ塩化ビニルの単独重合体と同様に, エチレン/塩化ビニル共重合体中にもC1, C2およびC4などの短鎖分枝が存在することが明らかとなった. 各々の分枝量を定量した結果, C1分枝が最も多く, C1>C4>C2の順序で少なくなることがわかった. さらに, これらの分枝は共重合体中のエチレン含量に伴って増加した. エチレンと塩化ビニルの共重合では, 重合時におけるエチレン単位の存在が分枝の生成に大きく関与し, head-to-head付加反応およびバックバイティング反応を促進していると推定した.