抄録
この総合論文では, 共役系高分子であるポリシランおよびポリ (p-フェニレン) の一軸配向膜の作製について述べる. 摩擦転写法によって不溶性ポリシランであるポリ (ジメチルシリレン) の超高配向膜を作製することができた. ポリ (ジメチルシリレン) 薄膜の物性は作製時の温度に強く依存していた. 210℃以上で作製した場合, 非常に高度に配向した均一な超薄膜が得られた. 作製温度依存性から, ポリ (ジメチルシリレン) の摩擦転写にはディスオーダーを含む六方晶が関与していると考えられる. 側鎖が短い難溶性のポリシランであるポリ (ジエチルシリレン) などについても摩擦転写によって高配向薄膜を得ることができた. これらのポリシランの摩擦転写膜は蛍光スペクトルにおいて粉末試料のものより高エネルギー側に発光ピークが観測された. 可溶性のポリシランであるポリ (ジーnーヘキシルシリレン) などにおいても配向膜を得ることができた. また, 不溶不融のポリ (p-フェニレン) についても摩擦転写法によって配向膜を作製することができた. ポリ (ジメチルシリレン), ポリ (p-フェニレン) 摩擦転写配向膜がもつ類似の構造をもった高分子を配向させる能力を調べた. 例えばポリ (ジーnーヘキシルシリレン) のような可溶性ポリシランをポリ (ジメチルシリレン) の表面にキャストすることでポリ (ジーnーヘキシルシリレン) の分子鎖をポリ (ジメチルシリレン) 分子鎖に沿って配列させることができた. ポリ (p-フェニレン) の摩擦転写膜の上に真空蒸着することによりオリゴフェニレンのエピタキシャル配向薄膜を得ることができた. また, ポリ (p-フェニレン) 摩擦転写膜を重合反応溶液中に導入することにより, 摩擦転写膜の上に新たに重合したポリ (p-フェニレン) の配向膜を形成させることができた.